01 営業を変革するー1/いかにチーム力を高めるか

 

先般、研修中にある新任の営業部長から、「どうしたらチームとしての業績が上がるんでしょうか。社長からの特命で部を預かることになったんですが、今までとはずいぶん勝手が違いましてね。よし俺が行く、そう言って数字を作ってくることはできても、それでは部下が育たないでしょう。なんとか今いる人材でやっていくしかないですしね。よし任せる、なるべくそう言うように努力はしているんですけど、すごくストレスが溜まるんですよ。いや、困ったものです」というご相談を受けました。

 

最近はときおりこういったお悩みを耳にします。どの企業も余裕がなくなり、人が減っているせいかもしれません。限られた人数で今までどおり、いや、今まで以上の成果を出そうと思ったら、組織の力をフルに発揮しなければならない、だが現実はどこも手一杯で、そうそう思ったようにはいかない、ということでしょうか。

 

人間の頭数の問題だけなら、契約社員でも派遣社員でも使ってくださいと言う他はありません。(もしかすると、それがいちばん確実で手っ取り早い解決法かもしれませんが…)
ただ、視点を変えて考察すれば、チーム力が高まらないことの背景に、どうやら別の要因が潜んでいるように思うのです。いや、最近では、むしろそのほうがより今日的かつ本質的な要因であるように感じられて仕方がありません。

 

高業績チームに共通しているものが何かを一口に言い表すのは困難です。しかしスポーツのチームを連想するなら、やはりお互いの「信頼関係」と積極的な「関わり合い」が不可欠だと思います。信頼関係の無いところに真の関わり合いは生まれませんし、一人一人が胸襟を開いて関わり合わないことには信頼関係も醸成されません。言うなれば、信頼とぶつかり合い、そのふたつが相まって初めて、チームの総合力が最大限発揮されるのではないでしょうか。

 

近頃企業の中でチームの勢いが落ちているのだとすると、それは単純に人が減ったということではなく、その一連の打ち手の中で発生した信頼感の低下や対人エネルギーの低下がいちばんの原因になっているのかもしれません。すべてがそうだとは申しませんが、いくつかの企業とお付き合いする中で、そんな印象を持つことがしばしばあるのは事実です。

 

件の新任部長も、お話を伺っていると熱意に溢れ、責任感は強いものの、はっきりいって<抱え込み型>です。「俺が何とかしよう」と言いながら、どこか本気で部下とぶつかっていくのを避けているふしがあります。義理人情に厚く、やさしい人には違いないけれど、自分のやり方だけに固執しています。たしかに自分ひとりで完結していれば他者と葛藤しなくてすみます。しかしそれでは、チームは強くなりません。お互いの信頼も高まらないでしょう。(あまり敷衍するべきではないかもしれませんが、最近あちらこちらの企業で「マインド面の不具合」が問題になっているのも、あながちこの話と無関係ではないように感じます。)

 

ひとまず、思っていることがあるのなら発信するべきです。発信しないと何も伝わりません。先読みばかりして用心深くなるのではなく、どうせ葛藤は避けられないのだから、石を投げてみたらいいのです。それからが議論のスタートです。
読者の皆さんも、所属している営業チームの現状をいちどチェックしていただければと思います。

 

いかがでしょうか。皆さんの営業チームでは、信頼関係をベースに情報のキャッチボールができていますか。お互い、積極的にぶつかり合っていらっしゃるでしょうか。

 

「言いたいことがあるから言わせてもらう」のは手間の問題ではありません。それは相互信頼の問題です。「もっと~してくれ」と要求するのは時間や工数の問題ではありません。それはエネルギーの問題です。

 

当然のことながら、個が集まってチームになります。抱え込みではなく、まさに「チームで勝つ」ためにも、ぜひ今一度、各自のなかにある信頼感とエネルギーの総和を確かめていただきたいと思います。